2010年10月13日水曜日

借りぐらしのアリエッティ

正直にいうと、初監督作品という要素を引いても褒められた内容の映画では無いと思っていて。なんでつまらないかと考えたときに、未回収の伏線だとかオチの弱さと言った、シナリオ面が弱いのかなと思っていたのだけど、よくよく考えるうちにこれは単純に映画を完成させる事で精一杯で、シナリオの表層部分だけをなぞるだけで終わっている気がする。

この映画でひとつ特徴的なのがクライマックスの手前で、翔くんがアリエッティに自分の病気を告白する件で、アリエッティにひどく意地悪な事を言う。その内容が自然淘汰と言った環境に関する内容なので、宮崎駿のいつもの小言なのかと思うのだけど、実はこれってアリエッティが光なら翔くんは闇である事の暗喩なはずなんだよね。

というのも、この翔くんは心臓を患っているせいで自由に出歩くことができない、祖母の家という狭い空間だけが彼に取っての世界なんだけど、それとは対照的にアリエッティは自由に出歩いて借りをし、さらには外の世界に引っ越そうとまでしている。つまりアリエッティこそ、翔くんが理想とする自分なのだけど、劇中ではこの二人の関係が好意以上恋愛未満に終わってしまっていて、アリエッティの母親を助けるのも単にアリエッティにカッコいい所見せたいといった所で止まってしまっている。

でも本来彼がアリエッティを助けるのは、アリエッティの気を惹くためというより、自分がアリエッティの代わりにもっと言えば自分がアリエッティになる事が目的だからこそ、危険な事を進んでするわけであって、それは金田正太郎が鉄人28号の肩に乗って操っているのと同じ構図なんだけど、アリエッティと翔くんの対比が弱いから好き嫌いの話になってしまっているのが残念かな。